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最高裁判所第二小法廷 昭和54年(行ツ)53号 判決 1979年9月28日

横浜市港南区下永谷町二七四一番地

上告人

西本富久

右訴訟代理人弁護士

尾崎正吾

松本昌道

佐藤義行

横浜市南区南太田町二丁目一二四番地

被上告人

横浜南税務署長 小松正

右指定代理人

岩田栄一

右当事者間の東京高等裁判所昭和五一年(行コ)第八五号所得税更正処分等取消請求事件について、同裁判所が昭和五三年一二月一九日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人尾崎正吾、同松本昌道の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取拾判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗本一夫 裁判官 大塚喜一郎 裁判官 木下忠良 裁判官 塚本重頼 裁判官 監野慶宜)

(昭和五四年(行ツ)第五三号 上告人 西本富久)

上告代理人尾崎正吾、同松本昌道の上告理由

原判決には、左のとおり法令の違背がある。

一、所得税法第一二条は「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、それを享受する者に帰属するものとして、この法律を適用する」と定めている。

二、右の規定は、いわゆる「実質課税の原則」と云われているものであり、その内容は所得の帰属の判定の場合の原則であるばかりでなく、所得概念の経済的実質的な把握あるいはある行為の経済的結果に対する税法的評価をする場合の原則をも意味するのである。すなわち「実質課税の原則」は、税法の解釈適用及び事実認定のすべてに関する一般的課税原則ともいうべきものである。

三、右のことは、国税通則法制定に際し、税制調査会がした答申において「税法の解釈及び課税要件事実の判断について、各税法の目的に従い、租税負担の公平を図るよう、それらの経済的意義及び実質に即して行なうものとする趣旨の原則的規定を設けるものとする」と述べられていることによっても裏付けられるのである。

四、ところで、上告人は「安西の依頼によりその都度、事業資金を融通したり、安西が第三者から資金を借り受けるについてその保証人となり、自己所有の不動産を担保に提供し、あるいは自己の名義を使用させるなどしていた」(原判決の引用する第一審判決)。更に安西は「その資金調達のため、上告人に担保の提供方を依頼してその承諾を得るとともに、いずれも金融業者である原弥門および新井重雄の両名に対しそれぞれ原告所有の不動産を担保に資金を融通してほしい旨の申込みをした。原、新井の両名は、いずれも一旦はこれを承諾したものの、いざ金員を交付する段になると、安西には資産、信用が乏しいので担保提供者である上告人が借主となるのでなければ貸せないといい出し、しかも右不動産担保の型態も買戻しの特約付売買とするよう要求したので、上告人も止むなくこれを承諾した」(前同)のである。

五、右の事実は、法形式上は上告人が借主とはなっているが、右借入れによる経済的効果を実質的に享受したのは、安西であることを如実に示すものであり、事実又安西に於て自己の事業資金に供し利息分は自己の負担において直接、上告人の手を経ることなく、貸主に支払ってきたのである。法形式上は上告人の借主となっていても、経済的実質的には物上保証人なのである。

六、上告人が原、新井の両名に対する物上保証人となったものである以上、右両者に弁済するための三辛商事に対する上告人の地位も又物上保証人としてのそれであり、右三辛商事に弁済するための大興不動産に対する地位も又物上保証人としてのそれであることが当然の帰結となるのである。かゝる当然の帰結から上告人は安西に対して求償権を取得したのである。

七、然るに法形式上の借主が上告人となっていることから、上告人は借主であって物上保証人ではないとした第一審判決及びそれを維持した原判決は、結局前記「実質課税の原則」の解釈適用を誤り、ひいては法令に背反したものというべきである。

以上

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